【vol.5】“売れない日々”と“やり続ける意味”

【vol.5】“売れない日々”と“やり続ける意味”
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2019年8月8日。
リアン株式会社としての第一号商品、「b-ternal BASE」が発売されました。

それは、原料の背景も、製造の思想も、理念も──
すべてにおいて妥協のない、“魂を込めた一本”でした。

「ようやく、大切な人に“本当にいいもの”を届けられる」

そう心の底から思っていました。


発売当初は、ご縁のある方々が“ご祝儀購入”してくださり、滑り出しは順調に見えました。

けれど──

翌月から、数字はみるみる落ちていきました。

  • 9月:売上78%ダウン

  • 10月:57%ダウン

  • 11月:69%ダウン

  • 12月:67%ダウン

  • 1月:66%ダウン

  • 2月:52%ダウン


ご祝儀は、確かに感謝すべき“きっかけ”でした。
でも、それは継続の理由にはなりませんでした。


実家に積まれたままの在庫は、まったく減らない。
飛び込み営業も手応えがなく、交通費すら捻出できない。

夜行バスで東京へ行き、ドリンク12本をスーツケースに詰めて飛び込み営業。
原付で大阪市内を走り回り、すり減ったタイヤは交換できず、
雨の日にはスリップして転倒する始末。

もがけばもがくほど、深みにハマっていく。

「これだけ“本物”をつくったのに、なぜ……売れないんだろう?」


思えば当時の私は、商品を“信じる力”はあっても、“伝える力”が圧倒的に足りていなかったのです。

誰に、どんな言葉で、どう届けるか。
その設計も戦略もなく、ただ「想い」だけで走っていました。


何とかしたい。
その一心で、私はセミナーの開催に踏み切りました。

商品の背景、発酵エキスの奥深さ、免疫と健康の可能性──
信じてやまないものを、直接伝えれば、きっと届く。そう信じて。


福岡では、ある方が20名ほどを集めてくださり、セミナーを開催できました。
ところが──質疑応答の場面で、空気が変わりました。

「で、結局これ、痩せるの?」
「ファスティングでどう使うの?」
「一言で言うと、何に効くの?」

私は、言葉に詰まりながら答えました。

「…すみません。“痩せる”という目的ではなく、“免疫”や“健康”のためのものです」

すると、ある参加者が言いました。

「あんたが『痩せる』って言えば、30本買ってあげるよ?」

私は、静かにこう答えました。

「……じゃあ、結構です。」


自分の中で、どうしても譲れない一線だけは、守りたかった。

でも、正直、心は折れかけました。

「ここまでこだわっても、“わかりやすい言葉”がなければ伝わらないのか」

壇上で汗をかきながら話していた、製造工場の社長の姿が、ふと脳裏に浮かびました。

私は、その社長の誠実さに惚れて、この道を選んだのです。


「誰のせいでもない。
すべて、自分の伝え方が未熟だっただけだ」

そう思い直し、私は初心に立ち返ることにしました。


たとえキャッチーなコピーがなくてもいい。
派手な広告文がなくてもいい。

でも、「この人の役に立てる」と確信できる人にだけ、正直に届けよう。


理念は、武器になるまでに“時間”がかかる。
それは、信じ続ける覚悟を持った人間だけに意味を持つ。


そう心に決め、「伝え方の再構築」に取り組み始めました。


ある日、ある店舗の先生がこう言ってくれました。

「売れるかどうかは、正直わからない。
でも、あなたの想いに、私は賭けてみたいと思った」
「本気で語る人の言葉には、力がある。だから私も信じてみたい」

その言葉を聞いた瞬間、私は涙が出そうになりました。


「そうか。届けたいのは、“効果の証明”じゃなかったんだ」
「届けたいのは、“関係性の中にある信頼”だったんだ」


理念だけでは、たしかに食べてはいけないかもしれない。

でも、理念があるからこそ、一生かけてやる意味がある。

私は、そう心から思いました。


この商品は、どうしても届けなければならない。

なぜなら、b-ternal BASEが広がっていくことで、
農家さんにも希望が届き、
業界の常識にも“ほんまにいいものって何か?”という問いが広がっていく。

そう信じているからです。


[次章予告]

第6章|“ほんまに伝わる言葉”を探して

── セールスじゃない。真心を言語化するという仕事。

時 昴
記事を書いた人
時 昴さん