【vol.6】セールスじゃない。真心を、言葉に変えるという仕事。

「商品に自信はある。理念もある。けど……伝わらない」
それが、独立後、真正面から突きつけられた現実でした。
売上は低迷。努力もしている。想いもある。
なのに、伝わらない。届かない。響かない。
「届けたいのは、“心”のはずなのに……
心って、どうやって言葉にすればいいんやろう?」
私は、自問し始めました。
「“本当に伝わる言葉”とは、一体なんなんだろう?」
セールスライクな言葉は使いたくない。
でも、理念や情熱だけでは、人は動かない。信じてくれない。
「“想いがあるから買ってください”なんて、甘すぎる」
「“ほんまにいいもの”やからこそ、正しい言葉で届けないといけない」
私は、思いました。
「自分の言葉を磨かな、あかん」と。
言葉は、ナイフにもなる。包帯にもなる。
祈りにもなれば、火を灯すこともある。
私は、自分の中にある“祈り”のような想いを、
ちゃんと届く言葉に変えたかった。
そこで始めたのが──「巻物手紙」でした。
印刷じゃない。テンプレートでもない。
一人ひとりに、手書きで。心を込めて。
商品のスペックよりも、
「なぜこの商品をつくったのか?」
「自分は誰のために命を使っているのか?」
ただそれだけを、真正面から、まっすぐに書き続けました。
ある日の手紙には、こう綴りました。
〇〇様
突然のお手紙、失礼いたします。
〇〇様のサロンでは、腸活を軸にした施術をされていると拝見し、
勝手ながら、筆を取らせていただきました。私たちの商品は、“酵素ドリンク”ではありません。
あくまでも、“発酵ドリンク”です。痩せる、映える、SNSで拡がる──
そういう商品ではありません。でも、私は本気で思っています。
「この商品は、大切な人にこそ使ってもらうべきものだ」と。どうか、一度、お手に取っていただけませんか?
心を込めて、お届けさせていただきます。
そんなふうに、一通ずつ、宛名を書き、ポスティングしていきました。
言葉を丁寧に重ねるようになってから、少しずつ、空気が変わっていきました。
「手紙、読みました」
「よくわからへんけど、一回だけ使ってみようかなって思った」
そう言って、お試し導入をしてくださる方々が、少しずつ現れ始めたのです。
“商品”は変えていない。
“自分”も変わっていない。
変えたのは──「言葉の届け方」だけでした。
そのとき、私は強く思いました。
「“売る”んじゃない。
“このサロン様の繁栄には、この商品が絶対に役立つ”と信じて伝える。
それが、自分のスタイルや」
言葉は、売上をつくるための“武器”ではなく、
信頼と信念をつなぐ“架け橋”。
この感覚が芽生えた頃から、流れも少しずつ変わり始めました。
パンフレット、セミナーテキスト、提案資料──
すべてに、“温度”と“意味”を込めるようになった。
誰かに丸投げしない。
どこかの広告会社が書いた“刺さる言葉”ではなく、
自分の言葉で、自分たちの想いを語る。
ただ、理念は、語るだけでは文化にならない。
言語化して、共有して、伝え続けて初めて、“文化”になる。
だから今、リアンの仲間たちとも、
一つひとつの言葉を、丁寧に共有しています。
セールストークではなく、「届ける言葉」として。
価格説明ではなく、「関係を築く言葉」として。
理念のある商品には、言葉にも“品格”が必要。
そしてその言葉は、“生き方”と一致してないと、嘘になる。
「本物の言葉」は、華やかでなくていい。
むしろ、素朴で、静かで、誠実であってほしい。
でもそこには、“自分の人生”が滲んでいないといけない。
そう思えるようになってから、
私は、自分の人生そのものを、言葉に重ねるようになりました。
届ける言葉とは、その人の“在り方”そのもの。
今では、そう心から信じています。
[次章予告]
第7章|“ほんまにいいもん”を、流行りにせず、文化にする
── 一過性じゃ終わらせない。100年後に残す思想として届ける挑戦。