【vol.4】発酵エキスとの出会いが導いた、人生最大の覚悟

新大阪でのあの日の出会いは、
私の人生を、大きく、深く、揺さぶりました。
目の前にいたのは、前職で扱っていた酵素ドリンクを生み出した、まさにその人。
しかも、日本で唯一、有機JAS認証の発酵エキスをつくる工場の創業者でした。
開口一番、社長はこう言いました。
「原材料を、自分の目で一度見なさい。そして、自分で学びなさい」
その言葉に、私は腹の底から、打たれた気がしました。
その瞬間、私は静かに覚悟を決めました。
もう、「売れるかどうか」で判断するのはやめよう。
「安定するかどうか」でもない。
ただ一つだけを信じて、
“ほんまにいいもの”を、“本当に届けたい人”に届ける。
そのためなら、もう一度、ゼロからやり直そう。
私が、リアン株式会社として世に出す第一号商品の名前は、
「b-ternal BASE」と決めていました。
しかし、販売方法、マーケティングの勝ち筋はまったく見えていませんでした。
なぜならこの商品は、
“腸内環境が変わる!”や“痩せる”といったいわゆるセールスワードを一切使わない商品だったからです。
むしろ、それらを使わないことにこそ意味がある。
原料の背景
作り手の哲学
「届ける側の覚悟」
それだけで勝負する商品を、果たして世の中が受け入れてくれるのか——
正直、不安はありました。
けれど、「迷い」は一切ありませんでした。
なぜならこれは、「ビジネス」ではなく、
「使命」だったからです。
いつも心に浮かんでいたのは、“大切な人”の顔でした。
売上でも、利益でもなく、
「大切な人に恥じない商品を」
その一心で、開発を進めていました。
派手でなくていい。
話題にならなくてもいい。
それでも、“大切な人”のために、全力を尽くしたかった。
そんなある日、発酵エキス工場の社長から、ふと言われました。
「比叡山に登ってみたらどうか」
工場があるのは、比叡山延暦寺の麓、仰木(おうぎ)という小さな村。
延暦寺と深い縁のある、自然と祈りが共存する土地です。
私は仰木から、比叡山延暦寺へと登りました。
ひとり、汗をかきながら、静かな山道を歩きながら、問い続けました。
「自分は、何のためにやっているのか」
「誰のために、この命を使うのか」
答えは、すぐに出ました。
「自分が信じた“本当にいいもの”を、大切な人に届けること」
それだけは、誰に何を言われても、絶対に譲れない。
私は、そう心に決めました。
そして山頂にたどり着いたとき。
比叡山延暦寺の石碑に刻まれた言葉が、私の目に飛び込んできました。
「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」
この言葉は、比叡山延暦寺に1200年以上受け継がれる哲学です。
「それぞれが、自分の持ち場で全力を尽くし、周囲を照らす存在こそが“国宝”である」
私は、その言葉を見た瞬間、震えました。
「自分も、会社も、こう在りたい」
心の底から、そう思いました。
そして、2019年8月8日。
リアン株式会社として、第一号商品「b-ternal BASE」が、ついに発売されました。
それは、マーケティングや売上戦略から生まれた商品ではありません。
“大切な人を、大切にする”という理念から生まれた、命のような商品です。
[次章予告]
第5章|“売れない日々”と“やり続ける意味”
── 理念だけでは食べていけない。現実と理念の狭間で見えた突破口。