【vol.1】ラグビーと信念が教えてくれた「在り方」の原点

私の原点は、ラグビーです。
3歳の頃、父の背中を追いかけるように始めて以来、
学生時代のほとんどすべてを、楕円球と共に過ごしてきました。
「One for all, All for one」
“一人はみんなのために、みんなは一人のために。”
この言葉に初めて出会ったのは、小学生の頃。
ラグビーの基本信念だと教えられました。
けれど中学生になったある日、ある先生がこう言ったのです。
「One for all, All for one
“一人はみんなのために、みんなは一人のために。”
お前ら、これは違うぞ!
“みんなは一人のために”ではない。“みんなは、一つの目的のために”だ」と。
この言葉に、私は衝撃を受けました。
“一人のため”と“目的のため”では、チームの在り方がまるで違う。
大切なのは、「何のためか」。
そう教えられた私は、高校時代にも、恩師から常に本質を問われました。
「勝つことは目的じゃない。何のために勝つのかを考えろ」と。
この“目的思考”こそが、今の私の思考習慣の土台になっています。
社会人になり、私は外資系ホテルに就職しました。
配属は宿泊部のフィットネスセンター。
朝6時には職場に入り、多くのVIPゲストを迎える毎日。
とはいえ、英語が堪能なわけでもありません。
当時の私の語彙力は、たった4つ。
「Good morning, sir.」
「Good morning, ma’am.」
「Would you like a bottle of water?」
「Excuse me.」
それでも、笑顔とジェスチャー、そして“なんとかなる精神”で、
多くのお客様と関わらせていただきました。
中でも、ある航空会社のパイロット、マッケンジー氏とは
言葉を超えて親しくなりました。
日本に来るたびに連絡をくれ、一緒に立ち飲みに行く仲にまでなってました。
英語は相変わらず90%は理解できませんでしたが、
人は、心で繋がれる。言葉がすべてじゃない。
そう実感した、かけがえのない時間でした。
ある朝、人生の価値観を大きく揺るがす出来事が起こります。
いつも通り、朝の6:00から業務に入っていたある日。
本来は空いているはずのないマッサージルームのドアが、なぜか開いている。
違和感を覚えて中を覗くと──
尊敬していたマネージャーが、女性更衣室を盗撮している。
言葉を失いました。
あまりに信じがたい光景に、心も体も凍りつきました。
怖くなって、声も出ませんでした。
私はそのマネージャーを心から尊敬していたのです。
人としての懐の深さ。
上司として、人生の先輩として、大好きでした。
だからこそ、誰にも言えませんでした。
「何かの誤解ではないか」「自分の目がおかしかったんじゃないか」
何度も自問しました。
意を決して、私は労働組合と人事部に告発しました。
──結果は、口頭注意のみ。
その日から、マネージャーからは毎日のように、直接的・間接的な“教育”という名の圧が続きました。
何度も呼び出され、詰められ、こう言われました。
「裏切ったな」「恩を仇で返すつもりか」
でも、私はどうしても納得ができなかった。
涙をこらえながら、声を震わせて言い返しました。
「おっさん、それはおかしいやろ。…犯罪やぞ」
──私は弱かったかもしれません。
でも、「正しいと思うこと」だけは、どうしても曲げたくなかった。
そのホテルを辞め、私は新しい道を模索し、
そして行き着いたのが──旅行会社でした。
ラグビーで培った根性と、ホテルで経験した「人とのつながり」。
それを武器に、新たなステージに立った私は、
ここでまた、新たな“人生の目的”と出会っていくことになります。